物語におけるメッセージ性【アドベントカレンダー15日目】

物語におけるメッセージ性【アドベントカレンダー15日目】

misw No Comment

新入生の方々はご入学おめでとうございます。また、そうでない方もこのページに足を運んで頂きましてありがとうございます。MIS.Wで言うところの49代、文学部2年のsaiというものです。このサークルをご検討なさっている文系の方々には、文系でも無問題だよとだけ申し上げておきます。やたら心配している方が多いようなので、念押しです。
さて、12月のアドベントカレンダーでは物語の基本的な組み立て方をお話ししました(http://misw.jp/archives/662)。具体的な方法論を教えろ! という方はこちらをご覧ください。まだまだ隠しパラメーター『完成度』だとか『サラダボウル理論』だとかお話ししたいことは山ほどありますが、ここで手の内を全て明かしてしまうのも味気ないので止めておきます。もしご縁があれば私に直接聞いてみてくださいね。
そして、今回はタイトルにもある通り、物語のメッセージ性についてお話ししたいと思います。体系的な理論というよりはエッセイ感覚になると思うので、どうぞ肩の力を抜いてお読みください。

◯メッセージ性について
前回の記事でも触れた通り、メッセージ性というものは物語において重要な位置を占める要素の一つです。エンタメ小説では往々にして蔑ろにされますから、多くの方が「それは純文学のやることだ!」と仰るかと思います。しかし、その反面メッセージ性の強い作品というものも存在することは皆さんもご存知の通りです。メッセージ性は物語を通して読者の価値観に訴えるものですから、ひょっとしたら彼らの人生を変えてしまうかもしれません……それだけ作品の深みが増すということです。私も以前はメッセージ性をあまり意識せずに小説を書くことがほとんどでしたが、最近この要素が如何に大切であるかを感じるようになりました。特にキッカケというほどのものはありませんが、多分歳のせいだと思います。時の流れって怖い。

 

◯『楽園追放』とメッセージ性
さて、みなさま楽園追放はご覧になったでしょうか? 東映アニメーションとニトロプラスが原作の映画、そうアレです。CGやアンジェラバルザックばかり言及されていますが、さすが脚本虚淵玄と言うべきでしょうか、この物語はメッセージ性の表現という点において巧妙なプロットになっております。以下☆印の間でネタバレがありますので、ご視聴の予定がある方は二か所目の☆印まで飛ばしてお読みください。ストーリーについては極力触れずメッセージ性について解説するつもりなので、致命的なネタバレにはならないよう充分配慮はしていますが……。

 

☆☆☆☆
この物語の構図は『人間』と『知恵』(≒技術)の関係性を暗示するものになっています。楽園に住む『機械化した人間』と地球に留まった『人間らしい人間』、そしてこの物語の鍵となる『人間化した機械』、この三つの象徴を交えることで、人間と技術の関係性について表現しています。ここで着目すべきは主人公のバルザックが『機械化した人間』であるということです。我々人間の技術に対する態度は間違っており、元来そうであった『人間らしい人間』と比較することでそれを否定し、『人間化した機械』の登場で技術に対する正しい姿勢を示唆しているように思います。楽園でバルザックに指示を出す三柱(?)は全て『知恵』を象徴するものになっていると思いますが、お気付きになったでしょうか? そもそも、アダムとイブが楽園を追放されたのは知恵の実を食べたことが原因ですから、当たり前といえば当たり前ですね。未視聴の方を配慮して話の筋にまでは踏み込みませんが、総じて面白い構成になっていると思います。

 

☆☆☆☆
さて、この章では具体例を挙げました。ですが、そもそも物語を媒介としたメッセージの伝達はどのようなプロセスになっているのでしょうか? 次はそれを明らかにしていきたいと思います。

 

◯メッセージ性のメカニズム
物語は言ってしまえば他人ごとです。登場人物の活躍、屈辱、葛藤は全て読者自身の経験ではありません。しかし、メッセージ性というのは読者の価値観に直接干渉することで初めて伝わる概念であり、この間には少し隔たりがあるのです。だから、筆者は読者に『特殊』である物語を抽象化することでメッセージ性という『普遍』に変換する手続きを求めます(上の楽園追放の分析も一度登場人物の役割を抽象化していますね)。そして、この作業がどれだけ容易かどうかがメッセージ性の伝わりやすさの指標になるという訳です。
また、余談ですが物語におけるメッセージ性の特徴は、間接的であるが故の説得力にあります。物語を一つの具体例として提示することで読者に強く訴えることが出来るのです。逆に、伝えたいことを直接言葉にしてしまうとその物語が物語であることの意義を喪失します。伝えたいことを生のまま言うだけなら評論やエッセイで事足りるのです。

 

◯メッセージ性を取り込もう!
では、具体的にどうやって創作にメッセージ性を付与すればいいのでしょうか?
結論から申し上げますと、①世界観②ストーリー③キャラクターのいずれか(あるいは複数)の要素を『特殊』とし、『普遍』たるメッセージ性に重ね合わせればいいのです。例えば①でオーソドックスなのは「魔法なら死者を蘇らせられると思っていたら、実は対象の大切な人二人の命を代償にしなければならなかった」のようなパターンです。過去を引きずることはよくない的なメッセージ性とかが引き出せそうですね(雑)。②の場合は例えば「鶴の恩返し」とか「笠地蔵」とか、童話や説話に多いかもしれません。③は②と比較すると心情の変化にウェイトがあります。敢えて誤解を招きそうな表現をすると『純文学っぽいやつ』です。
一番簡単なのは、メッセージを主人公に投影し、筆者の伝えたいメッセージと全く逆の価値観を持った人を敵対させることです。逆に、メッセージ性と反対の立場の人間を主人公にすることで反面教師にするのもアリだと思います。迷ったらまずこれらの構図から試してみましょう。前回の記事でも述べた通り、メッセージ性も含めてそれぞれ起承転結を意識することが大切です。

 

◯最後に
前回同様駆け足でしたが、如何でしたでしょうか? 実は少し自戒の意味も込めてメッセージ性をテーマにしたのですが、書きながら考えを整理していたので多少ちぐはぐになっていたかもしれません。少しでもあなたの創作活動の役に立てれば幸いです。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

最新情報を更新中!

Twitterに、新歓情報をはじめ最新の情報を掲載しています。